前世イメージ療法
← 当時の研修の修了書です。
前世療法はアメリカの精神科医ブライアン・ワイス博士の著書『前世療法1・2』(PHP文庫)によって紹介されています。
かなり以前となりますが、当方が開業した頃、アメリカで精神科医ブライアン・ワイス博士(『前世療法1・2』(PHP文庫)の著者)からトレーニングを受けました。(当方ではあえて前世イメージ療法と呼んでいます。)
人生のさまざまな体験や思いを整理するには、前世イメージ療法が適している場合が多くあります。また現実のトラウマ等の処理においても、原因となっているターゲットのトラウマを見つけにくい症例などの場合には、最初から原因を特定しない緩やかな方法として前世イメージ療法は有用だと考えられます。
ワイス博士が退行催眠でクライエントを治療中に、偶然、前世の光景としか思えないところにまで退行してしまうという出来事が起こりました。以後、ワイス博士は積極的に催眠による前世退行の治療によって、トラウマ治療を行ってきたことがその本で報告されています。ワイス博士自身が書いておられることですが、けっして、博士による特別な催眠テクニックの発見ではなく、ワイス博士以外にもそのような現象を確認していた催眠療法士もいたということです。
前世療法は催眠療法の特殊な技法の一つと言えます。特に深いトランス状態が必要というようなものではありません。緊張を解き放ち、リラクゼーションの催眠誘導に続けて前世イメージへの誘導を行います。私はこれで実際に前世が存在するとかしないとかということは、いったん棚上げして考えても良いと思います。あるいは、興味本位でそんなものが見えるのなら、試してみたいということでもいいと思います。
そこでの前世というのはイメージであり、その人の人生を映し出しているメタファーのようなものだと思います。見えた前世というイメージが事実であるかどうかなど、どうでもいいことです。セラピーとしての気づきがもたらされるかどうかが重要な点でしょう。
臨死体験をされた方がそれ以後、性格や考え方が変わったという話がよくあるように、これに近い気づきが前世療法によってもたらされる場合もたくさんあるようです。
本当に前世があるのか無いのか、それを証明することは生きているかぎりできないでしょう。しかし、前世が存在するとか、しないという議論を越えて、上手く運んだ前世療法では、クライエントにやすらぎや気づきがもたらされると思います。
ですから、前世療法は「療法」の一つであり、前世があるかないかは、別な問題です。よって、前世療法はイメージ療法の一つであり、あえて言えば、前世というメタファー(比喩)を駆使するイメージ療法だと思います。
また前世療法の利点は、人生の様々な迷いや問いに対して、セラピストが回答を与えるのではなく、クライアント自身が前世イメージの中で気づきを得ることがほとんどです。特殊な技法ではありますが、人生相談的な悩みについては特に効果があると思います。
前世療法は何度も受けるべきでないという意見もあります。私が何度も前世療法を施術した方はおられますし、その方の人生を切り開くお手伝いをさせていただきました。ワイス博士も『前世療法(PHP文庫)』で、一人のクライアントに何度も施術された症例を報告されています。
繰り返しますが、私は前世療法で見る「前世」というものはイメージでしかないと考えています。そして、前世というメタファー(比喩)を使っているのだと考えています。そして、そこでのイメージやメタファーはあくまでも現在の時点が投影されたものとして解釈せざるをえません。仮に、前世というものが存在するとしても、人が生きているのは現在です。それゆえ、いかなる過去も現在というフィルタを通して見ていると言えます。そして、過去は現在に集約されていると思います。
人はどんな過去の想い出も、現在というフィルターを通して思い起こすのです。過去世イメージ、あるいは前世イメージがいかに見えるかは、現在の自分の目を通して変化しているのであり、すべての過去は現在へのメッセージでもあると言えます。
幾通りもの前世イメージを催眠で見た方は、自分にしかない生き方のパターンのようなものや、現在の自分との共通点を見つける場合があります。それは、過去世イメージが現在の自分自身への問いかけのようなものです。そこから、今をどう生きるかが必ず示されてくると思います。
前世療法による過去世イメージへの不思議な魂の旅を通して自分探しをしてみたいと思われる方、あるいは、気づきが欲しいと思われる方、人生の意味をとらえなおしたいと思われる方、そのような方は是非、お試しください。
前世療法にはどのような効果が期待されるか
前世療法を受けることは、擬似的に死を体験することでもあると思います。その意味では、程度の差こそあるかも知れませんが、臨死体験に似ています。臨死体験をした人が、その後、死を恐れなくなり、いまの人生の使命を深く痛感したり、生き方がもっと前向きに変化したりする場合があるようです。それと同じような変化が前世療法でももたらされると言えます。臨死体験の体験者に起こる変化や共通した点を以下のように指摘する研究者もいます。
①死に対する恐怖の減少
②以前よりも強くなったという感覚
③生の重要性や宿命といったものに対する特別な感覚
④神あるいは運命によって特別な恩恵を受けているという確信
⑤死後にも存在が続くという強い信念
(参照 安藤治『瞑想の精神医学』p.293、春秋社)
このような変化は、前世療法においても起こると言えますし、前世療法を受けるということは、自分の内面に目を向けることにつながります。前世というイメージを通して生と死を経験することができます。
これによって、死への恐怖がやわらぎ、生きる意味への気づきが与えらることがあります。その意味で、ホスピスなどで催眠療法が体力的に可能な方にはとても効果のあるメンタルケアの方法になると私は思います。
過去世が本当にあったものかどうかを証明することは、生きている限りできないことです。だから、前世療法は無意味だということにはなりません。
前世療法の意義は、前世イメージが本当にあったことかどうかよりも、「療法」として今の自分に気づきを与えてくれるということにあります。前世イメージを見て、そこでの人生の目的がわかり、そこで達成できたこと、できなかったこと、そして、得たもの、あるいは得ようと思っても得ることができなかったものなどを知ることで、いま、ここでのあり方への気づきを得ることが可能です。
もし、いま抱えている問題がある場合には、ほとんどの人が前世療法によって解決への糸口を与えられると思います。
私は前世療法を施術していて、いつも不思議でならないことがあります。それは前世への誘導を終えて、次の人生への出発までの中間生(バルド)において、たいていの人が出会うマスター(守護霊)によって示唆を与えられることです。しかも、その人のパーソナリティを何段か越えたような高次の言葉が投げかけられてきます。それはとても不思議なことです。
正直なところ、私がクライアントさんを前世に誘導し、あとはクライアントさんご自身で、前世イメージと守護霊との出会いのイメージによって、大きな気づきが得られると思います。
誘導するセラピストとしては、その方の抱えている問題の解決の糸口を先読みすることがとても困難な場合も多くあります。でも、クライアントご自身で気づきを得ていかれ、解決へと導かれていくのです。そこにはセラピストの恣意的な誘導はありません。これは前世療法の特徴であり、優れた点だと思います。