ブランドン・ヘイズ『癒しへの旅』(PHP出版)で紹介されている瞑想は心理療法室において行うことが可能なひとつの題材であると思う。
著者はセラピストであるが、自身が重い腫瘍を患ったが、手術を受けずに自らを完治させたという。著者は自分で自分を癒す方法を見出し、自己催眠的な瞑想を行い回復に至ったという。その体験がこの本に書かれている。
本書では、そのような瞑想も具体的に紹介されているので、それを実践することも出来ると思う。詳しい方法はご自分でお読み頂くと良いが、そのエッセンスは次のようなものである。
「小さなキャンプファイヤーを思い浮かべてみたらどうかしら、そしてその記憶の中に出てきた全ての人をそこに座らせて、炎の周りでちょっとお話をするのよ。
当時、彼ら(自分を責めたりした相手)がどうしてそんな態度を取ったのか聞き出してみてはどうかしら。そしてあなたの本当の気持ちを伝えるの。当時の幼いあなたが、彼らがまるでそこにいるかのように話すのよ」(45頁)
このような瞑想によって、「本当の自分がつけていた仮面を取り除いて」、幼い時の記憶の中で自分が「受けた深い傷と無力感を体験する」ことによって、自分の中に根付いているトラウマを解放するという。著者は自分のことについて次のように言う。
「幼い子どもだったにもかかわらず、なぜか私は本当の気持ちを表してはいけないということを学んでいた」。
「それに、もっと重要なことは、感情を感じていることを自分で認めることができなかった」(44頁)。
私たちは多忙な日常生活に追われながら、自分の心を自分で見つめ直す余裕もないのが常である。だから、なかなか自分のことは自分で分からない。けれど、本当に自分を見つめる時間を持って、自分に気がつくことはとても大切なことだと思う。自分の感情に気づくというのは、マインドフルネスやフォーカシングでも共通することだと思う。
たとえば、悩みを抱えている場合、それを誰かに聞いてほしい。そして何か言って欲しい。自分の外部から答えを欲しいと言わんばかりに、ついつい誰かに相談することもあるだろう。
けれど、本当の意味で気づきというのは、自分の内側にあって、答えも自分の中にあるのだと思う。問題はそれをどのようにして引き出せるかということではないだろうか。
静かな瞑想の中でキャンプファイアーを思い浮かべて、これまで生きてきた時間の中で出会った人たちを思い浮かべて行く。
そして、気になる人と瞑想の中で対話する。どうして、その人は自分にあのように接したのかと過去に出会った知人に問いかける。
時には、自分は赦すことができるのか。それを問うていく。そして、もし赦せるならば赦していく。
すると、結局、赦しは自分がこだわりから解放される契機となる。赦せていない自分とさよならができたとすれば、そのとき、新しい自分になって行くのだと思う。
本書は自己催眠の一つの方法を提案するものである。静かな瞑想によるトランス状態へ自分で入催眠できる人ならば、とても分かりやすい瞑想方法だと思う。このようなイメージ療法も積極的に心理療法室で行うことができる。
催眠は様々な種類の方法があるが、急速催眠などの例外的なものは別としても、その根本は深いリラックスをともない、そこから気づきや暗示が可能となる。それが催眠的な心理療法の目指すものである。
催眠心理療法の入り口である瞑想とトランスによる精神の集中が、ある程度は可能という方は、本書のような方法も試されると良いと思う。
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