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 心理師ブログ 

オーディオとイメージ療法   堀 剛

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 最近のオーディオはCDに始まり、i-podなども普及して、デジタル化によりとても便利になった。
 私もi-podを車に持ち込んで聴いている。ある日、ジャズを聴きながら、ふと、「原音追求」という言葉を思い出した。これはCDが存在しなかった一昔前、いわゆるLPレコード時代の(私に言わせれば)死語?である。

 かつて、オーディオの世界には「原音追求」という言葉があった。オーディオ機器のメーカーは大まじめにこの目標をかかげ、オーディオの頂点は「原音」であり、どこまでそれに近づけるかということにオーディオの価値があるかのように考えていた。(いまでもそのように考えているとしたら、ごめんなさい!)

 私は音楽を聴くのはほとんど車の中である。車の中は自分空間でしかないから、安全な運転さえ出来ていれば、以外と音楽を楽しめる時間でもある。
 だが、車の中でのオーディオは、「原音追求」とはかなりかけ離れた場所でもある。たとえば、普通車セダンでしかない私の車にまさか実際の演奏現場ほどの音量はありえないだろうし、「原音」とされる音質がなければ本当に満足がいかないのかと言えば、そんなことはまったくない。重要なのは、車の中という限定された空間でも、音楽を楽しめるかどうかということでしかない。

 ところで、私が時々催眠の中で使用するテクニックのひとつとして、毛布の固まりを人に見立ててしっかりと抱いてもらうというものがある。これは年齢退行などで、対面した家族などをしっかりと抱きしめたり、あるいは抱きしめられている感覚を味わってもらうために行うものである。
 ある女性セラピストはクライアントを本当に抱っこして慰めるという話を本に書いておられたりするが、男性の私が男性を抱きしめるのはごめん被りたいし、男性である私が女性にそんなことなど出来ないのは言うまでもない。だから、膝掛けに使ってもらっている毛布を丸く束ねて、クライアントにそれを抱いてもらうのである。
 これは座布団でも良いし、あるいはぬいぐるみでも良いだろう。でも、目を開けるとパンダでしたでは興醒めするかもしれないので、手近な毛布を使うのだ。いわば抱き枕の要領である。

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 催眠の中で毛布を人に見立てて抱くクライアントがそれが毛布だと分かっていないのかというとそうでもない。いくら催眠に入っていても、それが毛布であることはどことなく了解している。でも、そのようなダミーであることは承知していても、そこにあふれてくる感情はけっしてダミーではなく、いまそこで、そのクライアントが吐き出さねばならない感情が露呈してくる。
 だから、抱きしめる相手は毛布であろうが、ぬいぐるみであろうがかまわない。それを抱きしめるという行為を通して、クライアントが吐き出さねばならない感情がそこにあふれる。そして、カタルシス(心の浄化)に至るのである。だから、癒されるのである。ほとんどのクライアントはそのような場面では涙があふれている。
 
 音楽も同じではないのか。それが毛布であるのかどうかなど問題ではないように、それが「原音」であるとかないとかはどうでも良いのである。いまそこで聞き手がそれを楽しめるならば、それ以上に何もいらない。
 たとえば、i-podを聴く地下鉄の中の高校生が原音を聴けているかどうかなど、その本人にとっても、またオーディオ道とでも言うべき四角四面な何かが世の中にあるのだとしても、それにとっても「原音」などどうでも良いのだ。
 そこで、楽しめるかどうかは、「音」に「
原」がついているかどうかではない。まさに楽しめているというそのことが問題であり、目標であり、すべてなのだ。 だから、仮にかつてのLP時代のようなオーディオ志向が復活したとしても、少なくとも「原音追求」というような事柄はもう意味がない話だと思うのである。
 i-podはMP3を使用することで多くの曲を保存することが可能となっているが、その音質はオリジナルのCDレコードよりもかなりの情報が減衰させられている。だが、それでも楽しく手軽に聴けるというメリットを優先していると言える。

 催眠を含むイメージ療法の世界は、実際にクライアントが現実と合致するイメージを体験したかどうかとか、そのイメージが真実であるかどうかによって癒されるのではない。
 真実であろうが、架空であろうがかまわない。「イメージ」を体験したかどうかで癒されるのである。だから、それは「原音」でなくても良いし、ただ「イメージ」であれば良い。

 

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